23/07/2026
【嘘をつくと詐欺罪になるのか】
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メールマガジン第182回目の投稿です。このメールマガジンでは基本的な法律識等を皆様にお知らせしていきたいと思っています。
今回は、「嘘」と法律上の「詐欺罪」について解説したいと思います。
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私たちは日常生活の中で、大小さまざまな「嘘」に遭遇します。「遅刻の言い訳」や「お世辞」、時には相手を思いやる「優しい嘘」もあるでしょう。しかし、ふと「嘘をつく行為は、法律上の『詐欺罪』にはならないのだろうか」という疑問を抱いたことはないでしょうか。
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結論から言えば、すべての嘘が犯罪になるわけではありません。日常の「嘘」と、刑法上の「詐欺罪」の間には、法律が定めた厳格な境界線が存在します。公的な法制度や裁判例を基に、その仕組みを紐解いていきましょう。
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<刑法第246条が定める「詐欺罪」の定義>
まず、法律が詐欺罪をどのように規定しているかを確認します。我が国の刑法第246条第1項には、以下のように記されています。
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「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。」
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また、同条第2項では、現金や品物といった「財物」だけでなく、債務の免除やサービスの受領といった「財産上不法の利益」を得た場合も同様に処罰すると定めています。
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この短い条文ですが、実際に罪が成立するためには、法解釈上、以下の4つの要素(構成要件)がすべて満たされ、それらがドミノ倒しのように一本の因果関係でつながっている必要があります。
1.欺罔(ぎもう)行為:人をだます行為
2.錯誤(さくご):だまされた相手が勘違いすること
3.処分行為:勘違いした相手が、自分の意思で財産を渡すこと
4.財産の移転:財産が加害者や第三者に渡ること
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つまり、単に嘘をついたという事実だけでは足りず、「嘘によって相手を勘違いさせ、その勘違いに基づいて相手に財産を差し出させた」という一連の流れがあって初めて詐欺罪が成立するのです。
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<「単なる嘘」と「欺罔行為」を分ける基準>
では、どのような嘘が法律上の「欺罔行為」に該当するのでしょうか。
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最高裁判所の判例(最高裁昭和31年12月14日判決など)の考え方に基づけば、詐欺罪における「欺く」とは、「相手方がその事実を知っていれば、財物を交付しなかったであろう重要な事実」について偽ることを指します。
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例えば、友人との待ち合わせに遅れそうなとき、実際にはまだ家を出たばかりなのに「今、駅に着いた」と嘘をつく行為を考えてみましょう。これは道徳的に非難されるべき嘘ですが、この嘘によって友人が財産を差し出すわけではないため、当然ながら詐欺罪にはあたりません。
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一方で、実態のない投資話で「絶対に儲かるビジネスがある。元本も保証する」と嘘をついて出資させるケースはどうでしょうか。お金を出す側にとって、「元本が保証されているか」「本当に利益が出る仕組みか」は、財産を処分するかどうかを決める極めて重要な判断材料です。このように、相手の財産的処分の判断に直接影響を与える重要な嘘こそが、法律上の「欺罔行為」となるのです。
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<他の犯罪との違いと「処分行為」の重要性>
詐欺罪のもう一つの大きな特徴は、被害者自身の「処分行為」を介する点にあります。ここに、他の財産犯(窃盗罪や恐喝罪)との明確な違いがあります。
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法務省の解説や一般的な刑事法解釈において、各犯罪は以下のように区別されています。
① 窃盗罪(刑法235条):他人の財産を、相手の意思に反してこっそり盗み出す。
②恐喝罪(刑法249条):相手を脅迫し、畏怖(恐怖)させて財産を出させる。
③ 詐欺罪(刑法246条):相手をだまし、勘違いした相手が「自らの意思で」財産を手渡す。
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だまされているとはいえ、被害者が自分の手で加害者にお金を振り込んだり、物品を渡したりする点が、詐欺罪の本質的な特徴です。
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<日常トラブルにおける境界線:借金を返さないのは詐欺か?>
日常生活で最もトラブルになりやすい「お金の貸し借り」を例に、その境界線をさらに具体的に見てみましょう。「明日返すから1万円貸して」と言われてお金を貸したのに、一向に返済されない場合、これは詐欺罪になるのでしょうか。
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ここでの判断のポイントは、「嘘をついたタイミング(動機)」にあります。
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もし相手が、お金を借りる時点で「最初から返すつもりが全くない」、あるいは「返せる当て(収入など)が絶対にない」にもかかわらず、「明日返す」と言っていたのであれば、それは相手を錯誤に陥らせるための嘘(欺罔行為)となり、詐欺罪が成立する可能性が高くなります。
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しかし、借りた時点では「本当に翌日返すつもりだった」ものの、その後に急な出費が重なったり、職を失ったりして「結果的に返せなくなった」というケースでは、当初の約束は嘘(犯罪)にはなりません。これは純粋な民事上のトラブル(債務不履行)であり、警察が介入する刑事事件(詐欺罪)とは明確に区別されます。
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<まとめ>
このように、刑法上の「詐欺罪」は、単なる嘘つきを罰するための規定ではなく、社会における「健全な財産取引の安全」を守るために作られた厳格な法律です。
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しかし、法律上は詐欺罪にならなくても、嘘によって他人に不利益を与えれば、民法第709条の「不法行為」に基づき、民事上の損害賠償請求を受ける可能性があります。また、民法第96条では「詐欺による意思表示は取り消すことができる」とも定められています。
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「嘘」という言葉の裏にある法律上の厳格な線引きを理解することは、複雑な現代社会において、予期せぬ法的トラブルから自らの身を守り、誠実な社会生活を営むための重要なリテラシーと言えるでしょう。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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宝塚花のみち法律事務所
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