弁護士 竹信航介

弁護士 竹信航介 弁護士・竹信航介(札幌弁護士会所属)の活動や思考について、定期的に?

12/11/2025

退職したいけど退職できないというのは結構多い相談です。

 結論からいえば、期間の定めのない雇用契約(無期雇用)の場合、退職はいつでもできます。(原則、退職の通知をしてから2週間で契約終了となります。)
 期間の定めのある雇用契約の場合は、原則期間満了まで退職できませんが、やむを得ない事由(例えば激しいパワハラを受けているなど)があれば直ちに退職できます。また、契約期間が1年超であれば、契約期間の最初から1年経過後は無期雇用と同様、いつでも退職できます。
 これは憲法18条や憲法22条の帰結でもあります。

 これに対して、「退職したら損害賠償を請求すると脅されている」とか、「代わりの労働者を見つけてこないと退職させない」「引き継ぎをしないと退職させない」とか、そういうことを言って退職させない使用者がいるようですが、全く気にすることはありません。
 上記のように、退職するのは労働者の権利といえます。ですから、退職が違法になることはまずなく、違法でないものに損害賠償を請求することはできません。
 後任探しとか引き継ぎとか、そういったことは(もちろん会社に協力してあげたほうが親切ではあるでしょうが)もっぱら使用者(会社)が考えることで、労働者がそんなことを考えてあげる義務はありません。
 こうした退職を妨げる内容の条項が契約書に入っていたとしても、それは裁判所に持っていけば無効になるはずです。

 退職を口頭で伝えるのが難しい人は、退職を通知するお手紙を会社に送ればいいです。会社がとぼけないように、配達証明付き内容証明で送るのがいいでしょう。
 「そんな急な辞め方をしたら会社から鬼電がかかってくる……」と心配になるかもしれませんが、退職してしまえば電話に応答する義務もありませんから、無視してOKです。
 会社との事後対応に不安があるなら、弁護士に退職通知を代理してもらって、事後対応も任せてしまえばよいでしょう。

 ところで、最近「退職代行」業者が上記のような退職通知を代わりにするというサービスを提供しているようです。
 自分で内容証明を出すのが面倒だから代わりに通知してもらう、というだけであれば、こういうサービスを利用するのもいいのかもしれません。(弁護士の場合、日弁連の倫理規程があって、委任契約書を作らなければなりません。)
 しかし、退職代行は弁護士と違って、法的な交渉はできません。なので、義務のないことを会社から求められたのに対して本人を代理して拒否するとか、そういった法的な交渉は自分でやらなければなりません。弁護士であれば、そうした交渉も代理人として任せることができますが、退職代行業者が交渉すると、「代理権限がない人とはお話しできません」などと会社から言われて、下手すると退職すらうまくできないことになりかねません。
 「もしかしたらややこしいことを会社から言われるかもしれない……」などちょっとでも心配がある人は、ちょっと面倒でも弁護士に相談することをおすすめします。退職代行業者と大差ない金額で引き受けてくれる弁護士は少なくないはずです。

 ついでに、ややこしいことを会社から言われて退職通知を他人に任せなければならない状況の人は、未払い残業代があったり、仕事のせいで病気になっていて労災保険が使えたり、会社に対して損害賠償を請求できたりする可能性があります。
 弁護士であればそういったことも対応できますので、退職して一息ついたら、そうした請求ができないか、担当弁護士に相談してみるのもいいと思います。

28/09/2025

日本の普通の人は、「犯罪者は逮捕される」と何となく思っているのではないかと思います。すなわち、犯罪に対する制裁=逮捕と思っているのではないでしょうか。
 だから、罪を犯したと報じられた人に対して、「逮捕されないのはおかしい!」などと叫ばれたりするのでしょう。

 しかし、逮捕は犯罪に対する制裁ではありません。
 逮捕は、罪を犯したと疑われる人について、逃亡や証拠隠滅を防ぐために一時的に身体拘束をする、いわば証拠保全処分に過ぎません。
 したがって、罪を犯したら必ず逮捕されるわけではありません。むしろ逮捕されない場合の方が多いです。

 では犯罪に対する制裁は何かといえば、刑法に定められた刑罰です。現行法では、死刑、拘禁刑、罰金刑などが法定されています。これらは、罪を犯したと疑われた人が検察官によって「起訴」され、刑事裁判が開かれ、そこで有罪判決が宣告され、判決が確定したあとに、検察官の指揮によって執行されるものです。
 判決が確定するまでは、罪を犯したと疑われた人であっても、罪を犯した人として扱われてはなりません。

 それにもかかわらず、今の日本では、「逮捕された」=「有罪」と思われています。
 その原因の一つは、マスコミ報道にあると思います。報道では、逮捕されると「容疑者」と呼ばれ、あたかも罪を犯したことが確定したかのように扱われます。
 なぜそのようにマスコミが扱うのかはわかりませんが、刑事事件の報道を警察に依存しているからではないでしょうか。警察の立場からすれば、起訴するかどうかは事件を送った先の検察官が決めることであって、特に重大事件では「犯人」を突き止めて逮捕することがゴールになっているのではないかと想像します。そこに情報源を依存していて、かつ速報性を過剰に重視する報道機関は、被疑者を逮捕した時点で事件が解決したという感覚を警察と共有し、逮捕した時点で大きく報道するのではないでしょうか。
 反面、報道での扱いを見ると、刑事裁判は逮捕のあとのセレモニー程度にしか思われていないような気がします。

 刑事事件を警察を中心にとらえる見方は、刑事司法を歪めていると感じます。
 警察が疑いをかければ、客観的証拠ではない捜査報告書で逮捕状が請求され、それに基づいて逮捕されれば有罪判決を受ける前なのに世間では犯人として扱われる。検察官や裁判官は警察の言い分を鵜呑みにした判断をしていないと信じたいですが、「事実は小説よりも奇なり」と言われるのに、稀なことが起こった可能性を簡単に切り捨てて、警察の当初の見立て通りの起訴、そして有罪判決に至る例もあるような気がします。
 せめてマスコミには、逮捕の扱いを考え直してほしいと思います。

17/07/2025

予告:弁護人と弁護士の違い、被告人と被告の違い、その他業界人からマスコミへの苦言について書きます。

01/06/2025

弁護士に依頼しないで、裁判所を使って権利を実現する方法には、私の考えるところ、①本人訴訟、②民事調停、③支払督促などがあります。他にたまに聞かれる方法として④少額訴訟や⑤労働審判があります。
 これらについて説明してみたいと思います。

  まず①本人訴訟は、弁護士に依頼しないで自分で通常の民事訴訟を起こす(あるいは民事訴訟を起こされたときに弁護士をつけないで対応する)ものを指します。
 簡単な訴訟ならできるかもしれませんが、普通は訴状の書き方からして弁護士以外には存外難しいものです。訴訟で有効な主張立証の方法や、裁判を円滑に進める作法なども、弁護士以外が一朝一夕に身につけられるものではありません。
 そのため、私はお勧めしていません。通常訴訟をやるなら、弁護士に依頼したほうがいいです。

 次に、②民事調停です。あまり知られていない手続きですが、実は弁護士に依頼しないで自分で裁判所を使うには最適な方法だと私は考えています。
 民事調停は、裁判所で中立な第三者(調停委員会)を間に入れて、相手と話し合いをする手続きです。話し合いなので、相手が出てこなかったり、出てきてもゼロ回答に固執したりした場合には、解決できないこともあります。しかし、裁判所からの呼び出しなので相手方は出席しないといけないという気持ちになりやすいですし、もし少しでも相手に解決する気があれば、調停委員会の働きかけによって解決につながることもあります。
 民事調停のいいところとしては、厳密な申立書でなくても受け付けてくれるので弁護士以外でも申立書を書きやすいところ、厳密な主張立証をしなくても事情が伝わる程度に説明して資料を出せば話が進む可能性があるところ、調停委員会には裁判官も含まれているので法的な考え方に基づいた解決を促してくれるところなどがあります。費用もそれほど高くなく、弁護士をつければ最低10〜20万円かかるような事件が、1万円足らずで解決できることもあります。

 その次に、③支払督促です。これは貸金業者がよく使いますが、簡単に言えば裁判所経由で(しかし裁判をしないで)相手方に請求書を出すものです。そして、相手方がこれに異議を述べないで放置すれば、相手方の財産を差し押さえるなどの強制執行をする権利も手に入ります。なので、金銭請求を目的とするなら、この方法も悪くありません。
 ただし、相手方が異議を述べれば通常訴訟に移行しますし、申立書には訴状並みの事実記載をしないといけないので、民事調停ほど気軽な手続ではないです。

 では、④少額訴訟や⑤労働審判はどうでしょうか。
 早期に結論が出るというメリットがよく強調されるこれらの制度の説明では、弁護士以外が自分で申し立てることを予定しているかのような書き方がされていることがあります。なので、自分でこれらの手続を利用して権利を実現しようと考える人もいます。
 しかし、実際にやってみると、これらの手続はほとんど1回目の裁判のときに全部の資料が揃っていないと、早期に結論を出すことができません。そして、1回目の裁判で必要な資料を全部揃えるには、実は弁護士の専門的知識が必要なのです。
 なので、少額訴訟や労働審判を弁護士なしでやろうとするのは、実は結構無謀なのではないか? と私は思っています。
 なお、少額訴訟は被告が異議を出せば通常訴訟に自動的に移行してしまいますし、労働審判も結論の審判に申立人か相手方のどちらかが異議を出せば通常訴訟に移行しますから、遅くともその段階ではやはり通常訴訟で必要な専門的知識がないと行き詰まりそうです。

 できるだけ費用や時間をかけたくないというのは、当然の要請です。
 弁護士としては、相談にいらした方に、「うまい(権利が実現できる)、早い、安い」を実現するためにはどういう方法が一番いいか、いつも知恵を絞っています。(全てを満たす方法というのはなかなか難しいことも多いのですが。)
 裁判所を使う必要があるかも……と思ったら、無理に依頼するよう強いることはありませんから、気軽に弁護士に相談してみていただければと思います。

31/05/2025

予告:損害賠償額の決まり方について。

27/05/2025

予告:解雇が無効になるとどれくらいのお金が動くのかについて、具体例をもとに書きます。

27/05/2025

予告:管理職の残業代請求について書きます。

05/05/2025

弁護士に依頼すれば、民事裁判には基本的に出席しなくてもよいです。(2025/5/5追記したため再投稿しました。)

 依頼者の方からよく聞かれる質問に、「裁判を起こすと、裁判には私も出席しなければなりませんか?」というものがあります。
 裁判は平日の日中に開かれるので、日中お仕事をされている方などは出席が難しいことがあります。なので、この質問は切実なものがあります。

 これに対する答えは、「基本的に出席しなくてもよい」です。
 民事裁判は、弁護士が代理人に就任すれば、弁護士だけが出席することがほとんどです。弁護士が出席した後、弁護士は依頼者に期日報告を送りますので、大まかな内容はそこで知ることができます。
 もちろん、ご自身の裁判なので、望めば出席していただくことは構いません。

 民事裁判で出席しなければならない場合で一番よくあるのは、争点整理が終わって、証拠調べで当事者尋問をするときです。
 これは、事情を知っている当事者に直接話を聞かないと争点の結論が出せない、という場合ですから、直接裁判所に来ていただいて質問を受ける必要があるわけです。(将来は遠方からウェブ会議システムで尋問を受ける形にできる場合が増える可能性があります。)

 もっとも、尋問に至る前の争点整理段階で裁判上の和解をする場合も少なくなく、この場合は一度も裁判所に行かないで裁判が終わることもあります。
 (「和解」とは、別に相手と仲直りするということではなく、「条件を決めての訴訟終了合意」というぐらいの意味だと思ってください。)

 ここまで、民事裁判で訴訟を起こす場合を想定して書いてきましたが、民事裁判で訴訟を起こされた場合も同様です。
 この意味からも、訴訟を起こされたら速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

 これが刑事裁判になると、話が違います。
 刑事裁判で被告人(民事裁判の「被告」とは別物です。マスコミ用語で「被告」と呼ぶために混乱が生じています。)になったら、原則として裁判所に出向かなければなりません。

 また、離婚調停や遺産分割調停のような、家庭裁判所で行われる家事調停も、当事者が自分で出席することが想定されています。労働審判もそうですね(裁判所は、労働審判は調停手続の変形だと考えているようです。)。
 なので、例えば離婚調停について弁護士が依頼を受けた場合には、弁護士と一緒に裁判所に行くことになると思ってください。
 調停というのは双方当事者のいろいろな事情を踏まえて柔軟な解決を目指す話し合いの手続きなので、当事者が直接いろいろな事情を裁判所に伝えることは有益なのです。(これは家事調停でも民事調停でも同じです。)

 そんなわけで、忙しい方こそ、裁判所での手続きにあたっては弁護士に依頼されることをおすすめしたいと思います。

(追記)
 なぜこのテーマを書こうと思ったかというと、生活保護に関わる訴訟のニュースに対して、「訴訟なんてする暇があったら働け」といった心無いコメントがつけられているのを見たからでした。
 政策形成を目的とする集団訴訟では普通、弁護士が代理人につきますし、打ち合わせの負担も普通の訴訟よりも小さいことが多いですから、訴訟をするのにそれほど時間は取られません。ですから、上記のような心無いコメントは的外れです。
 ついでにいえば、生活保護給付が違法に削られた場合に、受給者ががまんして他で働いて埋め合わせをして解決するのでは、違法状態が是正されないまま、いわば無理が通れば道理が引っ込むということになってしまいます。公権力の違法な行為に対して、裁判を起こして是正しようとすることは、憲法12条にいう「不断の努力」であるといえ、国民の義務であるとさえいえます。そのような尊い活動を冷笑することは、慎むべきであると考えます。
 (ただし、そうした集団訴訟では、弁護士は無報酬や極めて低額の報酬で、公権力の違法行為への怒りや依頼者の思想への共感などから使命感を覚えて代理人を引き受けていることが少なくありません。そうした集団訴訟を手掛ける弁護士に対して「お金目当て」などと揶揄することは、侮辱的であるだけでなく、的外れでもあることを指摘しておきたいと思います。)

20/04/2025

予告:カスハラを受けたら労働者は何ができるかについて書きます。
 予告ばっかりですみません。そろそろ本編を書いていきたいと思っております。

住所

中央区南一条西13丁目 第41ビッグプラザビルⅠ 5階
Sapporo-shi, Hokkaido
060-0061

営業時間

月曜日 09:00 - 17:00
火曜日 09:00 - 17:00
水曜日 09:00 - 17:00
木曜日 09:00 - 17:00
金曜日 09:00 - 17:00

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