13/08/2021
【質問】
私は5階建のビルを所有しています。1階は3店舗、2階は
5事務所、3階は7室の居住用マンションになっています。
管理会社に任せてありますが、定型の契約書用紙で、書き込
み式の簡単なもので不安を感じています。
先日、原状回復の内容・金額のことで、店舗の退去者と裁判
となり、どうも契約書に不備があったようです。今後、注意す
べき点を教えて下さい。
【回答】
一般的に契約書は重要で、私どもが相談を受けた時、契約書
を見て、不備があると思うことがあります。
将来の紛争を完璧に防止する契約書を作成することは難しで
すが、契約前に契約書の内容を十分検討することで、後々の紛
争を防止することはかなり減らせると思います。
このことは賃貸借契約書においても同様です。大手管理会社
だと、これまでの紛争事例を前提に、極力個別的事情を織り込
んだ契約書を作成していると思います。
定型的な契約書では、実情に合わないような内容になりがち
です。
居住用と店舗や事務所とでは、使用目的の限定、賃貸借期
間、保証金の決め方、賃貸借の解除事由、賃貸借終了時の清
算・処理のプロセス等に違いがあります。
店舗や事務所では、建物内の模様替え、改装がされることが
多いので、この点のルールはきちんと決めておくことが重要と
なります。
店舗や事務所の賃貸借においてトラブルになりやすいのは、
賃貸借終了後の、原状回復問題です。
居住用物件では、契約書で細かく一覧表にして、室内の各箇
所ごとに、細かく原状回復の責任者、負担割合を明確にしてい
る契約書を見受けます。
しかし、このような契約書を使っていても、返還時に双方
が、現場を確認作業をする過程で、トラブルになることがあり
ます。過大な原状回復費用を請求されるという紛争もよく見か
けます。
店舗、事務所では、模様替え、改装をしている時、原状回復
費用が何百、何千万円となることがあります。
賃貸人側が経年劣化による通常損耗までも含めて完全に原状
に戻すことを要求することもあります。
建物は年数が経てば当然古くなりますが、賃借人は毎月賃料
を払っていたので、このような建物の自然な汚れ、老朽化・痛
みについて、賃借人の責任とは言えず、新品同様に戻す必要は
ないと考えるのが一般的でしょう。
高裁判決で、営業用物件について「本件賃貸借契約には、契
約が期間満了または解約により終了するときは、終了日まで
に、賃借人は本件貸室内の物品等一切を搬出し、賃借人の設置
した内装造作諸設備を撤去し、本件貸室を原状に修復して賃貸
人に明け渡すものとする」とのみ定められていた事案で、
通常損耗を原状回復義務に含む特約があったと解釈すること
ができないとし、この部分の回復工事費用を賃借人に負担させ
ないと判断しました。
逆に言えば、「通常損耗を原状回復義務に含む明確な特約」
があれば、負担させられるので、注意が必要です。