ならい社会保険労務士事務所

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02/06/2026

【復職②】
今回は、私傷病による休職者の復職判断についてお話しします。
復職にあたっては、本人が主治医の「復職可能」とする診断書を提出し、復職を申し出るのが一般的です。
しかし、主治医の診断書には医学的な判断だけでなく、本人の意向が一定程度反映されている場合があります。
そのため、企業としては診断書のみで判断するのではなく、主治医の意見書や生活記録表なども踏まえ、総合的に復職の可否を判断することが重要です。
特に、主治医が「復職可能」と判断していても、生活記録表において睡眠が安定していない、外出がほとんどできていないといった状況であれば、復職後に再発するリスクが高いと考える必要があります。
判例上、復職が認められる水準は、「従前の職務を通常の程度に遂行できる健康状態に回復していること」とされています。
これは一般的に、正社員であれば所定労働日および所定労働時間について、特段の制限なく勤務できる状態を指します。
そのため、「当面は短時間勤務とすること」や「出張は控えること」などの就業上の制限が付されている場合には、原則として従前の職務を通常どおり遂行できる状態とはいえず、復職が認められない可能性があります。
もっとも、企業側が業務内容の調整や配置転換によってこれらの制限に対応できる場合には、安全配慮義務の観点から、可能な範囲で配慮を行うことが求められます。
この配慮の範囲は、採用時に職種が限定されているかどうかによっても異なります。
職種を限定して採用している場合には、他の職種の業務まで提供する義務は通常ありませんが、職種を限定していない場合には、配置転換なども含めて検討する必要があります。
ただし、従業員のために新たな業務を作り出す義務まではありません。
あくまで、既に社内に存在する業務であり、特別な教育を行わなくても他の従業員と同程度に遂行できる業務に空きがある場合に、配置転換を検討することが求められるにとどまります。
また、会社の規模や業務内容によっては、就業上の制限に対応すること自体が難しい場合もあります。そのような場合には、最終的に解雇や退職といった対応を検討せざるを得ないこともあります。
このように、復職の判断は本人の健康状態だけでなく、会社側の受け入れ体制によっても左右される点に留意が必要です。

23/05/2026

【復職①】
今回は、精神疾患による休職後の「復職」について解説します。
精神疾患を原因とした休職の一連の流れの中でも、最も難しく、実務上うまく運用されていないのが復職の場面です。
もともと精神疾患は再発のリスクが高いため、復職の判断を誤ると再び休職に至り、そのまま休職期間満了により退職や解雇となってしまうケースも少なくありません。
通常、復職の際は、本人が主治医の診断書を提出し、復職の申し出を行います。診断書には「復職可能」と記載されるのが一般的ですが、その内容は必ずしも純粋な医療的判断だけに基づいているとは限りません。
実際には、本人の「早く復職したい」という希望や、経済的な理由などが反映されることも多く、主治医はそうした事情も考慮して診断書を作成している場合があります。
また、復職の可否は、本人の病状だけでなく、復職後の就業環境も踏まえて判断する必要があります。しかし、主治医が職場の具体的な状況まで十分に把握しているケースは多くありません。そのため、「日常生活を送れる程度まで回復している」という観点で判断されることが一般的です。
つまり、「就業に十分耐えられる状態まで回復している」という判断とは一致しない場合がある点に注意が必要です。
特に、適応障害のようなストレス性疾患の場合、復職後に職場のストレスにさらされることで再発するリスクが高くなります。その結果、再度の休職に至り、最終的に休職期間満了によって退職や解雇となってしまうケースも見受けられます。
このように、復職の可否は主治医の診断書だけで判断すべきではありません。より実態に即した判断を行うためには、一定の手順を踏むことが重要です。
まず、本人が診断書を提出して復職を申し出た場合には、「主治医の意見書」と「生活記録表」の提出を求めます。
主治医の意見書とは、本人の就業状況(職種・役職・仕事内容・責任の重さ・時間外労働や休日労働の状況・出張の有無や頻度など)を具体的に記載した資料を主治医に提供し、それを踏まえて「どのような条件であれば就業可能か」という意見を記載してもらうものです。
一方、生活記録表は、起床から就寝までの生活リズムや日々の活動内容を記録させるもので、通常は2週間程度継続して記録させます。これにより、日常生活が安定しているかを確認します。
そのため、復職の申し出は、少なくとも復職希望日の2週間以上前に行わせる必要があります。
これらの資料を基に、産業医または会社指定医との面談を実施し、最終的に復職の可否を総合的に判断します。
次回は具体的判断基準についてお話します。

21/05/2026

【休職規定の問題点②】
前回は「休職事由」(休職の原因)についてお話ししましたが、今回は「休職期間」についてお話しします。
一般的に、古い就業規則ほど休職期間が長く設定されている傾向があります。これは、当時は終身雇用が一般的であり、休職の主な原因が身体的な病気やけがであったことが背景にあると考えられます。
しかし現在では、転職が一般的となり、休職の原因も精神疾患によるものが増えています。
身体的な病気やけがと精神疾患の大きな違いは、回復時期の見通しが立てやすいかどうかという点です。精神疾患は回復時期の予測が難しく、長期化しやすい傾向があります。また、復職後に再発するケースも少なくありません。
休職者の復帰時期がある程度見通せる場合、周囲の社員も理解をもって業務を支えることができます。しかし、復帰の見通しが立たない状態が続いたり、復職と再休職を繰り返すような状況になると、周囲の社員の負担は大きくなり、疲弊を招くおそれがあります。
では、休職期間はどの程度が妥当なのでしょうか。これは企業規模や業態によって異なるため一概には言えませんが、一般的には勤続年数に応じて次のように設定されるケースが多く見られます。
・勤続1年未満:3か月程度
・勤続1年以上3年未満:6か月程度
・勤続3年以上:1年程度
一方で、現在の医療水準は制度が作られた当時よりも進歩していることから、従来よりも休職期間を短縮することも検討の余地があります。特に中小企業においては、過去の事例などを踏まえると、2か月程度とする考え方も現実的です。
もっとも、休職期間を短く設定する場合には、「休職期間の通算」と「休職期間の延長」に関する規定を設けておくことが重要です。
「休職期間の通算」とは、一定期間内に同一または類似の疾病で再休職した場合に、前後の休職期間を合算する仕組みです。精神疾患は症状に波があり、一時的に出社できても再発することがあります。この通算規定がないと、短期間の休職と復職を繰り返すことで、結果的に長期間の休職が可能になってしまいます。
そのため、例えば次のような規定を設けます。
・復職後、1年以内に同一または類似の疾病により再度休職した場合は、前後の休職期間を通算する。
また、あわせて休職期間の延長に関する規定も必要です。
・休職期間満了時に復職できない場合には、一定の範囲で延長を認めることがある。
このような規定が必要な理由は、勤続年数にもよりますが、例えば「2か月で期間満了=退職・解雇」とした場合、トラブルになった際にその有効性が否定される可能性があるためです。
会社としても、「回復を待つための一定の配慮を行った」という事実を残すことが重要になります。
休職制度は、もともとは従業員の回復を待つための制度として運用されてきましたが、現在では、回復が見込めない場合に備え、退職や解雇の有効性を担保する役割もあわせ持つ制度となっています。
次回は、復職についてお話します。

18/05/2026

【休職規定の問題点①】
私傷病休職制度とは、従業員が業務外の病気やけがにより一時的に働けなくなった場合でも、直ちに退職や解雇とせず、一定期間、労働義務を免除し、雇用関係を維持したまま回復を待つ制度です。
この制度は主に、「休職事由」「休職期間」「休職期間中の取扱い」「復職」などで構成されます。近年の就業規則の雛形はよく整備されていますが、古い就業規則については見直しを強くお勧めします。
というのも、従来の規定は主に身体的な病気やけがを前提として作られており、精神疾患を想定した場合、うまく機能しないことがあるためです。
今回は見直しのポイントのうち、「休職事由」について説明します。
「休職事由」とは、休職に至る原因のことです。
多くの会社で見られる規定は、例えば次のような内容です。
________________________________________
第〇〇条
社員が、次の各号のいずれかに該当したときは、休職を命ずる。
(1) 業務外の同一または関連する傷病による欠勤が一定期間に及び、業務に支障をきたすと認められるとき
(2) 私傷病による労務提供不能の期間が継続して2か月に及んだとき
(3) 欠勤日数が、最初の欠勤日から起算して3か月間で45日に達したとき
(4) 出勤しているものの、精神または身体の疾患により、十分な労務提供ができないと認められるとき
________________________________________
この条文にはいくつか問題点があります。
まず、「休職を命ずる」という表現です。
休職はあくまで回復を前提とした制度であり、回復の見込みがない場合や長期療養が見込まれる場合には、休職を経ずに退職とする判断もあり得ます。
そのため、「休職を命ずる」ではなく「休職を命ずることができる」とする方が適切です。あわせて、「休職期間内に回復が見込まれない場合は、休職を命じないことがある」と明記することも有効です。
次に、(2)の「継続して2か月」という要件です。
精神疾患の場合、症状の波により出勤と欠勤を繰り返すことが多く、「継続」という要件では該当しにくくなります。そのため、「継続して」という表現は避けた方が実務に合います。
また、「2か月」や(3)の「3か月で45日」という基準は、現在の医療水準や職場環境を考えるとやや長い傾向があります。
基準が長すぎると、休職の判断が遅れ、結果として職場への負担が大きくなるおそれがあります。
さらに、(1)や(4)の「業務に支障をきたす」「労務提供が不完全」といった表現は抽象的であり、判断基準が曖昧になりやすい点も問題です。
そのため、より実務的には「実際に働けていない期間」を基準として、明確に定める方が望ましいといえます。
例えば、以下のような基準が考えられます。
・私傷病により、労務提供が不能な期間が継続または断続して2週間程度に及んだ場合
・欠勤日数が、最初の欠勤日から起算して1か月間で15日程度に達した場合
このように、実態に即した明確な基準に見直すことで、適切かつ早期の対応が可能になります。
次回は、「休職期間」についてお話します。

16/05/2026

【休職規定の問題点】
今回は、休職制度、特に私傷病による休職制度の問題点についてお話します。
私傷病休職制度とは、従業員が業務外の病気やけがにより一時的に働けなくなった場合でも、直ちに退職や解雇とせず、一定期間、労働義務を免除し、雇用関係を維持したまま回復を待つ制度です。
この制度は法律で義務付けられているものではありませんが、昭和30年代以降、「終身雇用」の考え方のもと、従業員保護の観点から多くの企業で導入されてきました。
しかし、時代の変化により課題が生じています。特に大きな問題は休職の原因です。制度創設当初は、循環器疾患や脳疾患、がんなどの身体的な病気が主な原因でしたが、近年では精神疾患による休職が増加し、休職理由の中でも大きな割合を占めています。
精神疾患は、身体の病気やけがと比べて回復時期の予測が難しく、長期化や再発のリスクが高いという特徴があります。そのため、結果として復職に至らないケースも少なくありません。
休職制度では、休職事由・休職期間・復職条件などが定められており、復職できない場合には退職または解雇となる仕組みが一般的です。
本来、休職制度は従業員の回復を支援するための制度ですが、こうした精神疾患の特性により、結果として退職や解雇につながるケースが増えているのが実情です。
このように、従来の休職規定では現在の実態に十分対応できていない面があり、見直しの必要性が高まっているといえます。
次回は、現行の休職規定の具体的な問題点についてお話します。

15/05/2026

【休職制度とは】
休職制度とは、従業員がやむを得ない事情で一定期間働けなくなった場合でも、会社との雇用関係を維持したまま仕事を免除する仕組みです。多くの会社で就業規則に定められていますが、法律で義務付けられている制度ではありません。
休職の理由は会社ごとに定められており、主に次のようなものがあります。
・私傷病休職:業務外の病気やケガ(メンタル不調を含む)
・自己都合休職:家庭の事情や学業などの個人的な理由
・起訴休職:刑事事件で起訴された場合
・出向休職:会社の命令による出向
この中でも、特にトラブルになりやすいのが「私傷病休職」です。
そもそも、会社と従業員は労働契約を結んでおり、従業員は働く義務(労務提供)を負い、会社はその対価として賃金を支払います。
そのため、業務外の病気やケガで働けなくなった場合、本来は契約上の義務を果たせていない状態となり、理屈の上では解雇の理由になり得ます。
しかし、休職制度があることで、すぐに解雇するのではなく、一定期間は回復を待ち、雇用を維持することができます。つまり、休職制度は「解雇を一定期間猶予するための仕組み」です。
では、休職制度がなければ、すぐに解雇できるのでしょうか。
結論としては、そうではありません。
日本の労働法では解雇は厳しく制限されており、休職規定がない場合でも、いきなり解雇すると無効と判断される可能性が高いです。
そのため、実務上は一定期間の療養機会を与えるなど、慎重な対応が求められます。
次回は休職制度の問題点についてお話します。

14/05/2026

【休職代行】
最近、「休職代行」というサービスが出てきています。
これは、「体調不良で休職したい」という意思を、本人に代わって会社へ伝えるものです。
従来からある「退職代行」は、「退職したい」という意思を本人に代わって会社に伝えるサービスであり、一見すると似ていますが、この2つは根本的に異なります。
大きな違いは、「退職」と「休職」の法的な性質にあります。
期間の定めのない雇用契約の場合、民法第627条により、労働者はいつでも退職の申し出をすることができ、原則として、その申し出から2週間が経過すれば、会社の承諾がなくても雇用契約は終了します。退職理由も問われません。
一方で、休職は法律上の権利ではなく、会社の就業規則に基づく制度です。そのため、本人が希望すれば必ず認められるものではなく、診断書の提出や会社の承認など、一定の要件を満たす必要があります。
このように、「退職」は本人の意思によって成立するのに対し、「休職」は会社の制度に基づいて判断されるものであり、この点が両者の本質的な違いです。
次回は、「休職制度」についてお話をします。

13/05/2026

【軽減判定】
今日は、国民健康保険の「軽減判定」について、分かりやすく説明します。
国民健康保険料は所得に応じて決まりますが、所得が一定以下の場合には、保険料のうち「均等割」と「平等割」が、7割・5割・2割の3段階で軽減されます。これを「軽減判定」といいます。
ここで大切なのは、
「保険料を計算する所得」と「軽減判定に使う所得」は別物であるという点です。
まず、保険料(特に所得割)を計算する際の所得は、
国民健康保険に加入している人の所得のみが対象になります。
そのため、会社員など社会保険に加入している人の所得は含まれません。
一方、軽減判定を行う際の所得は、
国民健康保険の加入者に加えて、世帯主の所得も含めて判定されます。
たとえ世帯主が国民健康保険に加入していなくても(社会保険加入でも)、その所得は判定に含まれます。
例えば、夫が会社員(社会保険加入)、妻が自営業で国民健康保険に加入しているケースを考えます。
一般的には収入の高い夫を世帯主にしますが、この場合、夫の所得も軽減判定に含まれるため、軽減の対象外となる可能性が高くなります。
そのため、
片方が社会保険、もう片方が国民健康保険というご夫婦の場合は、国民健康保険に加入している方を世帯主にしておくことで、軽減判定を受けられる可能性が高まります。

29/07/2025

試用期間の罠
多くの会社は採用後3ヶ月から6か月程度の試用期間を設けています。試用期間中の解雇は自由だと勘違いしている事業主がいます。特に採用後14日以内なら無条件で解雇できると思っている方がいます。14日以内というのは解雇予告手当の支払い義務がない期間です。
試用期間中は「解雇権留保付労働契約」といって、通常の労働契約より解雇の自由が認めらせています。しかし、合理的な理由があり社会通念上相当と認められない限り試用期間といえども解雇は出来ません。
合理的な理由とは「正当な理由のない遅刻欠勤が多い」、「勤務態度が著しく悪い」、「期待した能力に達していない」、などが考えられます。これらに該当したとしても、指導、教育をし、それでも改善が見られない場合は解雇が出来ます。
また、試用期間中でも労働契約は成立しているので雇用保険や社会保険の加入要件に該当している場合は加入させなければなりません。
試用期間と言えども解雇するには社会通念上相当な理由が必要です。と上述しましたが、それを逃れるために、採用当初は短期(3ヶ月程度)の有期雇用契約を締結する会社が見られます。有期雇用契約期間中に適性を見極め、適性がないと判断したら契約を更新しなければ問題ないと考えているからです。
しかし、有期雇用契約であっても、試用期間としての実態を有する場合は試用期間と同様の扱いをするという最高裁判決があります。細かいことは割愛しますが、試用期間の代わりに有期雇用契約を交わしたとしても、更新拒否には、不当解雇のリスクが伴うことだけ知っておいてください。

住所

松戸市和名ヶ谷948-8/512
Matsudo-shi, Chiba
270-2232 

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