09/12/2025
第一法規のFAX通信ですが、画像にすると読みづらいとのご指摘をいただいたので、テキストで載せることにしました。確定申告に必要な情報をお届けします。
いま知っておきたい!最近の税務トピックス
『譲渡所得を整理する① ~取得費編~』
1.はじめに
日経平均株価が初の5万円台になり、投資市場が活性化しています。不動産市況においても、マンションの取引価格が上昇しており、築40年超のマンションでも購入価格より高い金額で取引されています。そのため譲渡益が発生し、譲渡所得が発生するケースが増えています。来年の確定申告に向けて、いま一度、不動産の譲渡所得の取得費を整理します。
2.取得費となるもの
取得費には、売った土地や建物の購入代金、建築代金はもちろん、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれます。建物については、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額になります。ここまでは売買契約書を確認することでわかりますが、忘れがちなのが取得の際に支払った付随費用です。
①購入(贈与、相続、遺贈も含む)時に支払った登録免許税、登記費用、不動産取得税、印紙税
②借主がいる不動産を購入したときに支払った立退料
③土地の埋め立てや土盛り、地ならしをするための造成費用
④土地の取得に際して支払った測量費
⑤所有権などを確保するための訴訟費用(遺産分割に関するものは除く)
⑥不動産を使用開始するまでに支払った借入金の利子
⑦既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金
3.業務用資産と非業務用資産の違い
取得費の原則は上記ですが、業務用資産とそれ以外では、付随費用の取り扱いが異なることがあります。登録免許税、不動産取得税などの租税に関しては下記になります。
①売買または自己建設による取得
(業務用資産) 所得の計算上必要経費に算入する【強制】
(非業務用資産) 取得費に算入する【強制】
②相続、遺贈または贈与による取得
(業務用資産) 所得の計算上必要経費に算入する【強制】
(非業務用資産) 取得費に算入できる【任意】 取得費に算入しない場合は家事費
4.改良費とは
取得費に含まれる改良費とは、資産を取得した後に加えた改良のための費用です。賃貸物件における原状回復費用や、建物の劣化を防ぐためもの防水工事、壁の補修などは改良費にはなりません。2階建てを3階建てにしたなど、建物の形状や性質そのものが変わる場合は改良費に該当します。
5.特例を適用したときは要注意
不動産の買換え、交換などの特例を適用して取得した資産を譲渡するときには注意が必要です。特例を適用することで、適用時に支払うべき譲渡所得税を1回スキップしています。そのため、適用前に所有していた不動産の取得価額が引き継がれています。
適用前に所有していた不動産(A)の取得費 8,000万円 … ①
(A)の適用時の時価 15,000万円
本来であれば、このときに差額の7,000万円の譲渡所得が発生しますが、特例を適用して譲渡所得税を支払っていません。
買換えをした不動産(B)の取得費 15,000万円 … ②
(B)の譲渡価額 20,000万円 … ③
特例の適用を見逃してしまうと、③-②=5,000万円の譲渡所得と計算してしまいます。
取得価額を引き継いでいるので、③-①=12,000万円と計算しなければなりません。
特例を適用したことを納税者が失念していることもあります。特に相続で取得した場合、被相続人が適用していたら納税者にもわかりません。税務署で確認をすることが必要です。
##プロフィール##
税理士 永井智子(ながい ともこ)
(社)ファルクラム租税法研究会研究員。
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント』シリーズ(共著/第一法規)
ほか、論文・寄稿多数。