25/04/2025
大合議判決解説:令和5年(ネ)第10040号(知財高裁特別部)
原告(特許権者):株式会社東海医科
被告:医師A(美容クリニック経営)
(1)「自己由来の血漿」、「塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)」、「脂肪乳剤」の3つの成分を含有する「豊胸用組成物」の特許を保有する特許権者が医師Aを訴えた事件。医師Aが血液豊胸術のために生産した薬剤が特許権の範囲に属する、と特許権者が主張した。地裁は、医師が上記3つの成分が同時に含まれる薬剤を調合して被施術者に投与したと認められないとして、特許権侵害を認めず、控訴人の請求を棄却した。
(2)主な争点
・被控訴人が上記3つの成分が同時に含まれる薬剤を調合して被施術者に投与していたか
・特許発明の「組成物」は、被施術者の体内からの採血を構成要件とし、そのまま被施術者の皮下に投与されるものだが、実質的に「医療行為」の発明に当たるのではないか(医療行為は特許にならない)。
・医師が被施術者から採血して豊胸用組成物を製造する行為は、調剤行為ではないか(調剤行為は、特許権の効力の対象外)。
(3)裁判所の判断
・医師のノートの記載、被施術者に交付していた書類の記載、広告の記載等によると、医師は、上記3つの成分が同時に含まれる薬剤を調合して被施術者に投与していたものと認められる。
・人間から採取したものを原材料として医薬品等を製造する行為であっても、技術の発展を促進するために特許による保護を認める必要がある。
・組成物は、豊胸のために使用するものであり、その目的は主として審美にあるため「人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する医薬の発明」には当たらないから、医師の行為は「調剤行為」に当たるかについて検討するまでもなく、特許権の効力は及ぶ。 結論、医師Aは特許権者に売上1.7億の8%(1360万円)支払え。
豊胸用の薬剤は、治療用医薬ではない、という判断は、なかなかぶっ飛んでいて面白いと思いました。