15/07/2026
(質問)
抵当権の譲渡、放棄、順位譲渡、順位放棄が、さっぱりわかりません。助けて下さい。
佐藤様
お世話になっております。
例えば、佐藤様が、5,000万円が必要になり、銀行から借り入れようとした場合、銀行は、佐藤様の返済能力を審査します。その結果、抵当権設定が必要な場合が生じます。
つまり、返済保証として、佐藤様は所有している不動産を担保(返済保証)として差し出し、銀行はその不動産に抵当権を設定して、登記簿に登記します。
これにより、万が一、返済期限までに佐藤様が返済を行なった場合でも銀行は抵当権に基づき、裁判所に訴えて、佐藤様所有の不動産を処分(売却等)して、その売却額から、貸し付けた金銭を回収できます。
銀行も馬鹿ではありませんので、その不動産の資産価値の範囲内での貸付を行います。
例えば、佐藤様の所有している土地の市場における資産価値が4,800円であれば、5,000万円は貸し付けません。不動産を売却処分したところで、債権回収できないからです。
こうなりますと、5,000万円がどうしても必要な佐藤様は複数の銀行から小口で借り入れるしかありません。
1つの不動産で、複数の銀行に対して佐藤様は抵当権を設定することができます。
・土地の資産価値4,800万円
・A銀行から2,000万円 (第一抵当権)
・B銀行から2,000万円 (第二抵当権)
・C銀行から 800万円 (第三抵当権)
・D銀行から 100万円 (第四抵当権)
・E銀行から 100万円 (無担保)
合計:5,000万円の借入
佐藤様が返済期限に返済せず、結果として当該土地が売却され、4,800万円で売れた場合、その4,800万円から各銀行が順番に債権(貸付金)を回収しますが、その順番は決まっています。
抵当権者が最優先です。抵当権を有しない無担保での融資者の債権回収権は抵当権者に
劣後します。
そして、抵当権者の中でも第1抵当権者が最優先で回収権を有します。
上記の例で見ますと、A→B→C→D→E・・・の順番になりますが、4,800万円しかありませんので、A→B→Cと回収したところで、4,800万円は消えます。
D銀行とE銀行は回収できません。
抵当権は優先回収権になりますが、この権利は譲渡したり、放棄したりすることができます。
「抵当権の譲渡」は、優先回収の権利をそのまま引き渡すこと。
「抵当権の放棄」は、優先回収の権利を捨てること。
更に
・抵当権の先順位者が抵当権の後順位者のために
優先回収の順位をそのまま引き渡すことを「抵当権順位の譲渡」
・抵当権の先順位者が抵当権の後順位者のために優先回収の
順位を捨てることを「抵当権順位の放棄」
・・・・と言います。
抵当権の譲渡や放棄は抵当権者、無担保融資者の区別なく可能ですが、「順位の譲渡」「順位の放棄」は抵当権者間でのみ可能となります。
・A銀行から2,000万円 (第一抵当権)
・B銀行から2,000万円 (第二抵当権)
・C銀行から 800万円 (第三抵当権)
・D銀行から 100万円 (第四抵当権)
・E銀行から 100万円 (無担保)
合計:5,000万円の借入
抵当権実行による土地売却額4,800万円。
A銀行がE銀行に「抵当権の譲渡」を行った場合、E銀行はA銀行が行使できる権利を行使できます。
その結果、本来の順番では回収できなかった100万円を回収できます。A銀行の抵当権順位に変動はありませんので、A銀行はE銀行が行使した100万円を除く残り1,900万円を優先回収できます。
C銀行がD銀行に対して「抵当権の順位を譲渡」とした場合、D銀行が第三抵当権者になり、 C銀行が第四抵当権者になります。順位が変動します。
その結果、D銀行は100万円全額を回収できますが、D銀行が100万円を回収した時点で、4,100万円が消えますので、順位を譲渡したC銀行は残り700万円のみを回収することになります。
以上が「抵当権の譲渡」と「抵当権の順位譲渡」です。
では、ここで一旦、テキスト記載の問題を見ていきましょう。
債務者Aは甲土地を担保に抵当権を設定しました。
・B銀行から2,000万円 (第一抵当権者)
・C銀行から2,400万円 (第二抵当権者)
・D銀行から4,000万円 (第三抵当権者)
・E銀行から2,000万円 (無担保)
合計1億400万円・・・を借り入れています。
一方、土地の売却額は5,400万円しかありません。
この5,400万円に対して各債権者はいくらを回収できるのか?
>問題:1
BがEの利益のため、抵当権を譲渡した場合、Bの受ける配当は0円である。
【井真井】
5,400万円しかない中で順番に回収していけば、Eは一銭も回収できません。
しかし、Bが順位を保持したまま、その権利だけを譲渡した場合、EはBが行使できるはずの「2,000万円の債権回収権」を代わりに行使できます。その結果、Eは2,000万円全額を回収できますが、その結果、Bは0円となります。よって、この問題は正しいです。
では、次の問題を見ていきます。
・B銀行から2,000万円 (第一抵当権者)
・C銀行から2,400万円 (第二抵当権者)
・D銀行から4,000万円 (第三抵当権者)
・E銀行から2,000万円 (無担保)
合計1億400万円・・・を借り入れています。
一方、土地の売却額は5,400万円しかありません。
問題:2
BがDの利益のため、抵当権の順位を譲渡した場合、Bの受ける配当は 800 万円である。
【井真井】
抵当権者間の中での「順位譲渡」です。BがDに順位譲渡すれば、順位が入れ替わります。
Dが第一抵当権者、Aが第三抵当権者になります。しかし、この場合において、Dは第二抵当権者であるCの権利を侵害することはできません。
C銀行がAに融資決定する際、第一抵当権者Bの融資額が2,000万円であることを確認した上で、C銀行は第二抵当権者の地位を確保し、2,400万円の融資額を決めていますので、順位が譲渡されても、譲受人は譲渡人を除く他の抵当権者の権利を侵害できないことになります。
結果として、Dが回収できるのは5,400万円からCの取り分2,400万円を除いた3,000万円までのとなります。
Dが3,000万円、Cが2,400万円を回収した時点で残額0円。Bの配当は0円です。よって、この問題は誤っています。
では、続きまして「抵当権の放棄」と「抵当権の順位の放棄」を見ていきたいと思います。
<融資額>
・B銀行から2,000万円 (第一抵当権者)
・C銀行から2,400万円 (第二抵当権者)
・D銀行から4,000万円 (第三抵当権者)
・E銀行から2,000万円 (無担保)
合計1億400万円・・・を借り入れています。
一方、土地の売却額は5,400万円しかありません。
問題:3
BがEの利益のため、抵当権を放棄した場合、Bの受ける配当は 1,000 万円である。
【井真井】
「抵当権の放棄」は、本来行使できる権利の一部を捨てることを意味します。
Bは2,000万円の債権回収権を有していますが、この一部の権利を捨てると書かれています。それは、Eの利益のために捨てるとあります。
では、どのくらい捨てるのか?
この場合、Bの債権額とEの債権額を比較します。
共に2,000万円ですので、
B:2,000万円 対 E:2,000万円
1対1の関係です。
よって、Bは2分の1の権利を捨てることになります。
1対1が何故、2分の1なのか理解できない方もいるので、説明しておきますが、これ、均等ですよね。だから折半となります。
仮に「B:3 対 E:2」・・・の割合の場合、分母の合計は5となります。
5のうちBは3なので、「5分の3」
5のうちEは2なので、「5分の2」の割合になります。
3/5+2/5=5/5=1
1対1の分母の合計は「2」ですから、Bは2のうちの1なので
「2分の1」Eは2のうちの1なので「2分の1」となります。
Bは2,000万円のうち1/2の権利を放棄します。結果として、1,000万円をEに渡すことになります。
<融資額>
・B銀行から2,000万円 (第一抵当権者)
・C銀行から2,400万円 (第二抵当権者)
・D銀行から4,000万円 (第三抵当権者)
・E銀行から2,000万円 (無担保)
↓↓↓
本来の5,400万円の回収内訳は以下のとおりになる。
・B銀行から2,000万円 (第一抵当権者)
・C銀行から2,400万円 (第二抵当権者)
・D銀行から1,000万円 (第三抵当権者)
・E銀行から 0円 (無担保)
しかし、B→Eへの「抵当権放棄」により
↓↓↓
・B銀行から1,000万円 (第一抵当権者)
・C銀行から2,400万円 (第二抵当権者)
・D銀行から 400万円 (第三抵当権者)
・E銀行から1,000万円 (無担保)
よって、問題文は正しい。
では、最後に「抵当権順位の放棄」ですが、こちらは抵当権者間で順位を放棄することになります。
問題:4
BがDの利益のため、抵当権の順位を放棄した場合、Bの受ける配当は 1,000 万円である。
・B銀行から2,000万円 (第一抵当権者)
・C銀行から2,400万円 (第二抵当権者)
・D銀行から4,000万円 (第三抵当権者)
・E銀行から2,000万円 (無担保)
合計1億400万円・・・を借り入れています。
一方、土地の売却額は5,400万円しかありません。
先ほどの「抵当権の放棄」の場合は、「放棄する者」が本来回収できる権利の一部を、債権額割合に応じて捨てることを意味していましたが、「抵当権順位の放棄」では、抵当権者間で回収できる合計額が基準になります。
5,400万円を順番どおりに回収していきますと以下のとおりです。
<融資額>
・B銀行から2,000万円 (第一抵当権者)
・C銀行から2,400万円 (第二抵当権者)
・D銀行から4,000万円 (第三抵当権者)
・E銀行から2,000万円 (無担保)
↓↓↓
本来の5,400万円の回収内訳は以下のとおりになる。
・B銀行から2,000万円 (第一抵当権者)
・C銀行から2,400万円 (第二抵当権者)
・D銀行から 1,000万円 (第三抵当権者)
・E銀行から 0円 (無担保)
BとDの回収可能合計額は3,000万円となります。
B(第二抵当権者)が後順位のD(第三抵当権者)に対して、順位放棄する場合、この3,000万円を基準に分配することになります。
まず、<融資額>の割合を確認します。
B:2,000万円 対 D:4,000万円→ 1 対2
よって、Bは「3分の1」 Dは「3分の2」の割合になります。
B:3,000万円×1/3=1,000万円
D:3,000万円×2/3=2,000万円
よって、この問題は正しいです。
#抵当権 #抵当権の放棄 #抵当権の譲渡 #抵当権の順位 #宅建士 #宅建試験 #宅建合格法 #宅建短期合格
どうせ持つなら、大人気の法律系国家資格。短期一発合格者多数の実力教材