24/01/2016
人生の伴走者としてできること
私には大切なお友達であり、師であり、親でもある知人がいます。日ごろは時間を忘れてお喋りしたり、時には旅行したりします。その知人(Aさん)は、公務員を長年勤められ、現在八十代半ばのお年ですが、情熱や行動力はパワーアップしているように感じます。
私はAさんの昔話を聞くのが大好きで、生き生きと話すすがたに充実した人生を送られているなあと思います。また戦前の子供時代のお話や、戦時中の厳しい時代のお話も時に伺います。何事にも一生懸命な生き方には心打たれます。
そのAさんの唯一の悩みと思われるのは、ご主人様やお子様を早くになくされ血縁者が全くいないことです。Aさんのまわりには、たくさんのご友人がいて、Aさんの今までの努力や思いやりは多くの人に伝わっています。きっと困った時には手助けしてもらえると思います。しかし他人としては踏み込めない部分があり、まわりのお友達もきっと同じ気持ちでしょう。
私はAさんが80歳を超えたころから、一人の暮らしは大変だろう、何かお手伝いをと思いました。しかしご本人はきわめて元気で頭脳明晰、歩くのは私より早いほどです。とは言っても人間不死身ということはありません。人の生死を考えるときいずれそのときは来ます。Aさんの人間としての尊厳を最後までもって生きて頂きたいと思うようになりました。
いままでふたりでいろんなおしゃべりをする中で、世間ではやりの「エンディングノート」や「終活」の話をすることもありました。今は元気で熱血漢とはいえ、いずれ自分自身身体が弱る時や旅立つ時が来るという心配があったと思います。気落ちした人がいたら「まだ若いから大丈夫、あなたは特別」と励ますのが普通かもしれません。またこのような心中に踏み込むことは失礼かもしれないという思いもあります。そして何ができるかと考えると大変難しい問題です。
私にできることはないかと考えたなかのひとつに「任意後見制度」を使ったらどうかと思いお話しました。民法改正により2000年に介護保険とともに施行された「成年後見制度」は十数年を経てずいぶん知られることとなりました。しかし任意後見制度はまだあまり多くないようです。
成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」があります。「任意後見制度」とは判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて「誰にどのような支援をしてもらうか」契約により決めておく制度です。あらかじめ自ら選んだ代理人に、自分の生活、療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与える契約を、公証人の作成する公正証書によって結びます。
Aさんは今まで、老後はどこでどう暮らすか考えて、実際いくつかの施設を見学した時もありました。しかし自分の家で最後まで暮らしたいという結論を出されました。またお墓やご先祖の供養をどうするか、病気になったら・・等いろんな場面を想定されたと思います。将来の漠然とした不安を少しずつ明確にし、私もできる限り理解したいと努めました。
そして昨年4月末に公証人役場にて任意後見契約をいたしました。同時に遺言書も作成されました。もし財産が残ったら、すべてを**園に遺贈し子供たちのために使ってほしいとの内容です。この契約をすることにより、Aさんは生きる力と安心をもらったと喜び一杯の笑顔をみせてくださいました。
Aさん、これからご一緒に人生楽しみましょうねと心の中で思いながら、公証人役場を後にしました。チャレンジ精神旺盛、人のために尽くすこと大好きなAさん。私はAさんから歳を重ねることの意味も学ばせていただいたと思います。
この文章を書きながら、プライベートなことで公表すべきでないかもしれないという思いもあります。しかし同じような立場の方が同じように悩みを持っていらっしゃるかもしれないと思い書いてみました。行く末の心配が少し和らぎ、これからの人生を充実して過ごす方がふえればいいなあと思います。